特別低額給付金

いつ届く申請書?

 この老人のコンピューターは主人の懐具合まで把握していると見えて、定額と打てば低額と最初に出たのをそのとおりなのでそのままにしておくことに相成った。それはそれとして小生の住んでいる田舎の市には未だに申請書すら届いてはおらぬ。人づきあいがないゆえ、いや正確には隣近所の80を超えたばあさん達と朝ゴミ出しの時に寒いだの、暑いだの、ちょっとはましになっただのの言葉を交わすことはあるが、それを人々は人づきあいと定義されるのであろうか。「ところで政府から支給されるていう特別なんとかというやつはあんたとこにきたけ?」(こちらでは疑問文のあとには「け?」をつけることになっているのだが、小生には「け」といえばあっちのけが想像されて何百万回聞かせれてもいまだになじまないで困っておるのだが、今はそんなことを言っている場合ではない)とでも聞こうものなら、「それってなにけ?」「どうやれば入ってくるけ?」「あんた頼むから市役所に行ってきてもらえんけ?」と「け」責めにされるだろうことが想像されるので、こういったことは自分からは聞かないのを常態にしておるわけなのであるが。この2か月間学校が休みだったものでSCとしての収入が途絶えてしまっておるのでここ最近は青息吐息の状態であるゆえ、心待ちに待っておるのだが未だにその申請書すら届かないのである。どうなっておるのやら。

 と、嘆いてばかりでもなんなので、小生れっきとした行政書士会に加入しておる現役の行政書士でもあるからして(ただこの方面からの収入は近年めっきり減ってしまったが)、専門的な観点から給付金が遅れておる理由を考えていこうかとも思ったのじゃが、早く受け取ればいいだけのお金の遅れている理由を考察して、それがもし今の我が国の克服すべき問題のなかのひとつ(まあ言ってみれば小生の大発見ということになろうが)だったとしてだれが喜ぶか?。それはそうとして、話を進めてしまおう。

 さて行政書士と申しますれば、ご存じの通り(いやほとんど誰も知らないのであるが)、官公庁に提出する書類をお客さんに代わって書いてあげてその代金をいただくというのが主たる業務となっておるわけである。官公庁といううとすべてのお役所と思われそうだが、そうではありゃせんのであって、たとえば税務署類は税理士、登記所は司法書士というように、まあ言ってみれば縄張りが決まっておるのである。ところが弁護士だけはその資格を持っておれば行政機関に届け出るだけでそれらの資格で可能となる業務をみずからが行うことができるということになっておる。いってみれば弁護士は法律の資格の総元締めというわけじゃな。それはそうとして今は行政書士のはなしなのであるが、書類作成が業務ということで、小生もこれが主たる業務であったときは年間数十件くらいは書類を書き、その提出を代理したものじゃ。ただそうは言ってもその書類は難しいものではない、ただ一般の人にはなじみがない言葉で解説されておるので一見したところで面倒臭くなってやる気がそがれるので、それで少々お金がかかっても他人に頼んでしまえと思って、小生どもに依頼があるのである。

 皆様におかれましては、昨今のインターネットばやりの時代だから、行政などはさぞかし電子申請がすすんでいることだろうとご想像に及ばれるところでしょう。ところがであります、小生が今までに最も手掛けてまいりました建設業許可申請といいまして、一定の建設業を行おうとすると県知事に許可を申請しなければいけないことになっておるのですが、それが20年位前には3年に一度、その後は5年に一度更新しなければならないことになっております。その申請書類が20枚くらい、添付書類をいれれば全部で30枚くらいになるわけです。担当者は一度ざっと目を通すとほとんど見もしないものをです。どうしてそう言えるのかといえば、窓口の点検で間違いが見つかった場合は「ここ違ってます」となるわけですが、いったん点検が終わってしまって受理されてしまえば、役所から訂正の連絡がきたことが1~2回あった程度ですから。内情をぶちまけるようで業界からはブーイングの嵐が巻き起こりそうですが、5年後の更新の時もほぼ同じことを書く(といってもワードやエクセルに落とし込むのですが)わけですから、5年後に間違っていたことが分かるのですが、まあそのままです。そういうわけですから、書類は山のように積もるわけです。建設業関係の書類だけでもなになに課の一部屋くらいの広さの部屋を閲覧室として用意しているわけです。当然建設業だけではありませんので、役所全体では書類の保管にどれだけのスペースを割いているのか想像もできないくらいです。ですからこれはありません、あれは廃棄しましたといって1~2年の間に書類を次から次に廃棄し、データまでも取り出して壊してしまう財務省は、お役所の中のお役所と言われておるらしいですが、やっぱり行革って言いましたか?まあ時代の先端を行っているわけではありますしょうが。小生などはどうせパソコンで入れておるわけですから、フロッピーのやり取りに変えるだけでも場所を取らなくていいと思うのですが、そうは問屋が卸さないわけです。やっぱり偉そうにしたいのではありませんかね。ここはああではなくこうだ、ここを直してこい、この書類が足りないなどと言いながら心の中で上司にはする勇気がないのでせめて一般庶民を相手にうっぷんをはらすことがなくなればモチベーションが保てなくなるのではないでしょうか?来る日も来る日も同じ書類を見るわけですから。まあ捨てる場合だってそうですわな、これもあれもろくでもない書類ばかりだと思ってしまえば、破り捨てようが焼いてしまおうが、ハンマーでたたき壊してしまおうが、例の断捨離ではありませんが、あとはかえってすっきりするのではありますまいか?

 というわけで、持続化給付金も雇用調整助成金も一見すると非常にややこしくみえますが、そう見えるだけですから諦めないでくださいね。くれぐれも申請が面倒だから商売自体を廃業するかなどとは考えないでくださいね。自分なりにこれでいいと思った時点で持っていきましょうよ。足りない書類や訂正箇所はその時に教えてもらいましょう。あとがつかえているなどと言われてわからないままに引き下がったりしないようにしてくださいよ。広く窓口を設置しなければいけないのは役所ですから。わからない皆さんに落ち度があるわけでは決してないですから。