パソコン乗っ取り

不登園、不登校

 とうとうパソコンを乗っ取られてしまった。そういっても例のハッカーとか炎上とかいうやつではない。この老人には不肖の娘がいるのだが、その娘の娘ということになるので老人からすると不肖の孫ということになる。この田舎では保育園も総理の宣言の元一斉に自粛しますから休園にしますとはならないで、登園を控えられる人はできるだけ控えてくださいというゆるいお達しだったものなので、わが不肖の娘の選択肢は当然のごとく登園するということに相成ったわけである。しかしながらこういうご時世故、ソウリ(ぞうりではない)がそうおっしゃっておられるからには少々無理をしてでも休ませなければいけないと思う人や、自分の子供にウイルスでもうつってもらっては大変と思う親で、都会の人には信じられないだろうが、孫の年長組なぞは数人しかいないらしいのだが、5月はそのクラスはほとんど一人だったというではないか。聞いてみると下の子と遊んでいたという。ちなみに小学校の兄もどうしても家でにいられない子は午前中は学校で自習、午後からは学童で面倒を見るとのことになったので兄も当然のようにそのようなありがたい処遇に預かることとなったわけだが、午前中は多くて数人、恥ずかしそうに「皆勤賞はおれだけだった」というではないか。なんとも頼もしい孫ではある。ところが下の子がとうとうストライキを起こしてしまった。その手口はこうだ。子供だと侮っておるとえらい目に合うのだが。まず日曜日の午後、母親に「ばあばのところへ行きたいから連れて行け」と頼み、兄と一緒にやってくる(どうでもいいが、他にも孫がいるけど、みんなばあばのうちである。じーじではない。女は偉大である)。母親は当然のごとく「今日ここで晩御飯食べていこうかな」となる(「いってもいい?」ではない。ばあばはいつも小間使いなのだ)。当然ながら母親(わが不肖の娘)の傾向をその娘である孫は完ぺきに読んでいる。風呂に入りご飯を食べてさあ帰るというときになると「なになにちゃんうちに帰らない、ばーばの家で泊まるから兄ちゃんだけ帰れ」という。母親の剣幕を見ているので兄は僕も泊まりたいとは言いだしにくいので哀れ兄は一人で母親と一緒に帰る羽目になり、夜9時に無理やり就寝ということになる。ここまではよくあるパターンでもあり、いちどいいだすと絶対に譲らないこともわかっておるので、無理に帰らせようとはせず「明日保育園だから、着替えを取りに一緒にいってこよう」と話を向けてもその話には乗ってこず(一度帰ってしまうとまだまだ母親の方が力関係は上なのだ、それで明日から保育園に行かされる羽目になることを見抜いておるので)、じーじ一人で行ってこいというので、人使いの荒い孫だとは思いながらもしぶしぶ5歳の孫のパシリとなるのである。そして翌朝、保育園には行かない。うちにも帰らないとなったのである。そうなれば最後、もう王女様なのである。やい自転車で遊ぶだの、絵本を買いに行くだの、好きなアイスがないから買ってこいだの、わがままし放題、言い放題。こちらの堪忍袋の緒が切れる直前にぱっと態度を変える変わり身の早さ、この技をどこで身につけてくるのか?そんなわけで月曜日から登園拒否をしておるわけです。ちなみに不登校という言葉はあっても不登園という言葉は聞かないな。不登校とは学校に行ってない状態を指すのであって病気などではないなどと言われておったのだったっけ?そうだとすると、そこには本人の意思がまったくないではないか。学校には行かない、行きたくないという気持ちがあるから学校に行ってない状態が生まれるのではないのか?本人の学校に行かないという明確な意思があるからして学校に行ってないという状態も生まれるのだろう。そうだとすればそれは明らかに拒否をしているわけだ。「わたくしなにがしは本日より学校に行けなくなりました、よって以後何があっても登校いたしません」と泣きわめき、玄関の柱にしがみつきながら宣言しているわけだから拒否そのものではないか?学校に行っていないという状態をさすだとか、だれでも起こりうるだのとわかったようなことをいっておるが、ではどうして学校に行かないのかを本気になって聞こうとはしない。学校とはこんなところでいやだからと言ってもそう簡単に変えることはできないということになっておる。子供はそれに気づいておるのでそんなことはいっても時間の無駄だということでひたすら貝となるのだろう。病気ではなく、だれでもなるというのなら、どうして学校以外の選択肢を増やそうとしないのだろう。学校に行かない生徒の選択肢が増えたら、一般的日本国民としての質が落ちてしまうとでも考えておるのだろうか。と、話はそれまくったが、やれクレヨンしんちゃんだの、やれドラえもんにしろなどとパソコンが乗っ取られておるわけである。挙句の果てに疲れ果てた老妻は、まったく役に立たないじじいという言葉を残して自分の部屋で寝込んでしまっておるわけなのである。